mitsuhiro yamagiwa

2022-05-22

地を這うものたち

テーマ:notebook

第六章 思考の基盤を修復する

 おそらくいちばん大切な点が、生態学的な理解には時間がかかるということ。注意を充分に永く維持できてはじめてコンテクストは姿を現す。注意の持続時間が長引けば、それだけ多くのコンテクストが現れるのだ。

 私がソーシャルメディアで出会う情報は、空間的にも時間的にもコンテクストに欠けている。

 インターネットに検閲はないだとか、あってもごく一部だと世間では言われています。ですが、それは違います。くだらないコンテンツがネット上に氾濫しているせいで、人びとが深刻な問題や集団にかかわる問題から目をそらしがちになり、それが検閲と同じ働き方をするのです。

 最後に、即時性が政治運動にとって脅威となるのは、それにより「弱いつながり」がもたらされるせいだ。ソーシャルメディアを通じてできあがったネットワークに、「しばしば共通の反応や感情がもとになっていて、政治的プロジェクトを共有しているわけでも、社会問題についての共通の認識があるわけでもない」ということがバラッシの研究で指摘されている。

 私たちはいかに多くの時間と労力を、コンテクストが崩壊した大衆に気に入られる発言をひねり出すのにーーそして言うまでもなく、その大衆の反応を確認することにーー費やしているのだろうか。

 〈権力の〉唯一の限界は他者の存在であり、この限界は偶然によるものではない。そもそも人間の権力は複数性という条件に対応するものだからだ。同じ理由で、権力はそれを減じることなく分割可能だ。

 私はそこにあるすべての木や植物に目を走らせて、パターンがないか探る。どんに人が公園にいて、どんは人はいないのか観察する。それらのパターンを説明できるようになりたいと思う。

 ーーそこで成長し、地を這うものたちから目を離さずにーー私は「しないほうがよろしいのです」と答えるだろう。

『何もしない 』ジェニー・オデル/著、竹内要江/訳より抜粋し流用。