『自然という書物』 http://hanga-museum.jp/exhibition/index/2023-516
☞ 展覧会メモ
第1章 想像と現実のあわい ー 15、16世紀
第1節 神の視座から人間の眼へ
『健康の庭』初版 1485年 過去の規範を妄信しない客観性の萌芽
第2節 寓意と象徴
1-8 イソップ『寓話集』
1-11『被造物の道徳的対話』
犬はキリストを苦しめる者と同一視されていました。犬 = 迫害者たちの象徴
1-14 ヒエロニムス・ボス《懺悔の火曜日》
Bosch オランダ語「森」
『義務について』
篩 = 理性
1-18 ゲオルク・ペンツ『ペトラルカの凱旋』
「死」後も残る名声も「時」の流れに消えてゆき、最後には「永遠」が勝者となることが詠われています。 雄鹿 =「時」
《永遠の凱旋》
グランヴィル『自由の女神征伐のための大十字軍』
雄鳥 = 権力者の愚かさを暗示
第3節 自然の蒐集ー植物
自然への好奇心・探究心
『植物誌』 線によって、正確な植物のすがた・かたちを伝えようとした。
第4節 自然の蒐集ー動物
標本化しやすい生物 → 正確な描写
1-28 ゲスナー『動物誌』
『エンブレム集』
モットー(標語)と図像とエピグラム(警句)
1-33 『絹の虫』
自然を正確にとらえようとする見かた・考え方が、まだ芽生えていなかったことがうかがえます。
第2章 もっと近くで、さらに遠くへ ー 17、18世紀
第1節 想像から経験へ
物事の見かた・考えかたも、過去の規範よりも自らの経験を重視したり、多義的であった言葉と物の関係が一義的となったりと、今日の科学的客観性の萌芽が見え始めたことにも触れます。
接ぎ木された言葉と物の一致
2-3 アブラハム・ファン・デン・ヘッケン『四元素』
「火」・ 「水」・「土」・「空気」
2-4 デカルト『方法序説』自然を読み解く自らの方法
空間の中に充満する粒子の渦動
ヴェンツェスラウス・ホラー《死んだモグラ》1646年
第2節 キルヒャーの世界
主観的な想像界と客観的な物質界が混在した転換期を象徴
2-11 『ノアの方舟』
洪水の起きた正確な年と続いた期間を計算
方舟の寸法を推測した
2-12 『地下世界』
第3節 ひろがる世界
「誠実な手と忠実な眼をもって」自然が記述・描写される一方で、自然物・自然現象の研究成果によって、聖書の記述を科学的に立証しようとする試みがあったことにも注目します。
2-16 ネヘミア・グルー『植物解剖学』
花が植物の生殖器であることを初めて推定したグルー
2-22 ヨハン・ヤーコブ・ショイヒツァー『神聖自然学』
当時の科学をもって聖書を考証すること。
絵画と図解の融合
宗教と科学が混交
第1節 細かく、鮮やかに
ジョルジュ=ルイ・ルクレール・ビュフォン 『博物誌』
彼は生物を人間にとって有用な順番に並べています。
ジョルジュ・キュビエ『動物界』
迫真的な外観の描写と、正確な形態の図示が、見事に調和しています。
第2節 世界を股に
どのように対象を図解するかという情報伝達の手法
探検者の驚きをもって捉えられた自然のすがた・かたちには、彼らの制度化されたまなざしも反映されていることに留意する必要があるでしょう。
「驚異」はいとも簡単に「占有」と結びつくのです。
再現性の演出に一役買っています。
3-16 アレクサンダー・フォン・フンボルト『新大陸赤道地方紀行』
側面観
第3節 自然を身近に
第4章 デザイン、ピクチャレスク、ファンタジー
正確性や客観性が重視されるにつれて、自然へのまなざしから消えていった想像力が、ファンタジーの世界で花開いたことに触れることにしましょう。
自然のかたち ー デザイン
4-9 ジョフロア・トーリィ『万華鏡』
科学的な図解と植物の装飾化の類似を見ることができます。
4-14 ジョン・ラスキン『ヴィネツィアの石』
人工物と自然物の全体像から形態を抽出し、抽象化する手法 ラスキン
4-17 『プロセルピナ』
4-20 『ゴシックの本質』
ラスキンが嫌っていたのは、科学的眼差しによって自然を単純化しすぎることだったのかもしれません。
擬人化された植物たち
エルンスト・ヘッケル 神と自然を同一視する汎神論者
第2節 自然のすがたーピクチャレスク
「詩は絵のごとく、絵は詩のごとく」描かれた自然物・自然環境は、対象の全体像や図解の企図を直観的に把握することを可能にするといえるでしょう。
「ピクチャレスク」複数の異なる要素を組み合わせて「一枚の絵」とし、自然と美術の混交から生まれた作例
「デザイン」という図解が抽象化という引き算なら、「ピクチャレスク」は具象化という足し算といえるでしょう。
観相学・比較解剖学等の科学観
観測・観察による自然環境の正確かつ詳細な文字情報を、まさに1枚の「タブロー(絵/表)」として表したのが、フンボルトの「自然絵画」でした。
第3節 自然を謳う ー ファンタジー
4-41 ウィリアム・ブレイク『夜想』
植物と子どものアナロジー(類推)は、フレーベルの教育思想でよりはっきりとした形を見せます。
「幼稚園(Kindergarten)」
子どもの教育は植物の育成と同じように、生来の性質・性格を大切にしなければならないとする考え
4-39 『植物園』
4-46 『妖精の国で』
想像の世界が西洋の自然観を成していましたが、経験主義や光学器具等の登場が直観で自然を捉えることをうながしました。
4-49 『フラワー・ブック』詩的想像力によって自然を紡ぎ出す系譜と、自然を寓意的に解釈する系譜の両方に位置づけられる